人参養栄湯(にんじんようえいとう)
構成生薬
- 人参(にんじん)
- 当帰(とうき)
- 芍薬(しゃくやく)
- 地黄(じおう)
- 白朮(びゃくじゅつ)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 桂皮(けいひ)
- 黄耆(おうぎ)
- 陳皮(ちんぴ)
- 遠志(おんじ)
- 五味子(ごみし)
- 甘草(かんぞう)
作用の特徴
がんや重病で免疫機能が落ちて体力の消耗が激しい場合に用いる
十全大補湯との相違点は、造血・精神安定作用があること
対象となる症状
- 免疫機能低下
- 食欲不振
- 倦怠感
- 貧血
- 末梢神経障害
解説
人参養栄湯(にんじんようえいとう)は、体の働きを補う補剤のひとつで、全身の栄養状態を改善する漢方薬です。十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)と同じく、がんなどで体力や免疫機能も落ちてしまったときに用いられますが、その違いは、人参養栄湯には造血作用と、精神安定作用があることです。
そのため、不安や不眠などの精神神経症状が強い場合や、貧血症状がある場合などに用いられます。また、抗がん剤で神経細胞が障害されているときに、その保護作用を発揮して、しびれを改善させてくれる効果もあります。
最近ではがん治療において、化学療法や放射線治療の副作用を軽減し、QOLを改善する目的、高齢者のフレイル改善の目的などでも使用されています。
また、肺がんや肺転移などに使われることもあります。
エビデンス情報
婦人科がん治療後の全身状態改善・体力回復に対する人参養栄湯の効果
子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなどのうち、初回治療または再発治療がすべて終了してから1か月以上経過している患者で、食欲不振や疲労倦怠感、体力の低下、手足の冷え、手足のしびれ、寝汗、立ちくらみの症状などをひとつ以上有する外来患者90例に対し人参養栄湯投与群、非投与群とでランダム化比較試験を行いました。その結果、投与群では非投与群と比較し全般改善度で有意に優れた有効性を示しました。また、化学療法・放射線療法を施行している群で有意に優れた有効性を示しました1)。
月経過多による鉄欠乏性貧血に対する人参養栄湯の有効性
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどが原因で過多月経、不正出血があり、鉄欠乏性貧血と診断された患者のうち、ヘモグロビンが9.0g/dL以下の患者39例に対し、鉄剤単独群、人参養栄湯併用群とでランダム化比較試験を行いました。投与後、人参養栄湯併用群で有意にヘモグロビン値が上昇し、月経過多が原因となる鉄欠乏性貧血の症例に対して人参養栄湯と鉄剤の併用療法は有効であることが示されました2)。